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判例情報


平成27年(行ケ)第10116号
窒化物系半導体素子の製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 引用発明のコンタクト抵抗の低減を,技術常識や周知の技術にしたがって,転移の除去によるものと理解し,その原因となる加工変質層をエッチング処理で除去することは,当業者にとって格別の相違を要するとはいえない,とされた。

 事件番号等:平成27年(行ケ)第10116号(H27.12.24)
 事件の種類(判決):維持審消取消請求(審消取消)
 原告/被告:日亜化学工業株式会社/三洋電機株式会社
 キーワード:進歩性,技術常識や周知技術の適用
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

*相違点9の容易想到性を否定した判断は誤り
 n型GaN基板について甲4発明と同じ電極材料(Ti/Alの積層構造)を用いた場合について,当業者は,キャリア濃度が高くなればコンタクト抵抗が低くなるという作用機序自体は容易に見出すことができるといえる。そして,コンタクト抵抗が低いことは,半導体素子においては常に望まれるものである。
 さらに,少なくともシリコンについては,転位を含む加工変質層は完全に除去すべきものとされており,また,転位を含む加工変質層が電気的特性に与える悪影響は,シリコンとGaN系化合物半導体において異なるものではないといえる。
 以上からすると,甲4発明における研磨により生じた「表面歪み」の除去によるコンタクト抵抗の低減を,技術常識や周知の技術事項に従って,機械加工により生じた転位の除去によるコンタクト抵抗の低減と理解し,更なるコンタクト抵抗の低減を目的として,このコンタクト抵抗上昇の原因となる加工変質層を除去するとの観点から上記のエッチング処理を行うことは,当業者にとって格別の創意を要する改良の試みであるとはいえない。そして,本件優先日当時のGaN基板の転位密度は,104cm-2以下~2×10cm-2程度であったのであるから,甲4発明において,加工変質層を除去すれば,除去後の基板の転位密度は完全結晶と同程度となり,1×10cm-2以下となることは自明である。

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