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判例情報


平成25年(ワ)第3357号
非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本件特許の明細書及び実施例には,「球形の合金相(B)」の中心部のCr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束を高めることの記載があるだけで,「球形の合金相(B)」を含有させることで本件各発明の課題解決手段や,発明を理解するための技術的事項が,記載されているものとはいえない,とされた。

 事件番号等:平成25年(ワ)第3357号(東京地裁 H27.12.25)
 事件の種類(判決):特許権侵害差止請求(請求棄却)
 原告/被告:JX日鉱日石金属株式会/田中貴金属工業株式会社
 キーワード:サポート要件,訂正の対抗主張,漏洩磁束,球形の合金相
 関連条文:特許法104条の3,36条6項1号

○裁判所の判断

*サポート要件違反
 本件明細書等においては,少なくとも「球形の合金相(B)」中のCr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束を高める効果に影響を与えていることが記載されていること,いずれの実施例においても,上記「球形の合金相(B)」の部分においてCoとCrの濃度が高くなり,Crは周辺部から中心部に向かってより濃度が高くなっているとの態様でしか,漏洩磁束を高める作用効果を奏することが記載されていないことからすれば,当業者において,前記1(2)記載の本件各発明の課題解決手段や,発明を理解するための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとは言い難い。

*訂正の対抗主張には理由がない
 Crが「球形の合金相(B)」の周辺部から中心部に向かってより濃度が高くなっていることは,本件訂正に係る訂正事項にいう,球形の合金相内にCr濃度の高い領域と低い領域が形成されていることを意味するものではない。本件各発明における「球形の合金相(B)」については,必ずしもCoとCrの二元系合金であることを前提としておらず,「球形の合金相(B)」におけるCo濃度が直ちにCr濃度の裏返しになるという関係も存しないから,本件明細書等の上記各段落の記載をもって本件訂正の根拠とすることもできないというべきである。
 前記のとおり,本件明細書等の実施例においては,一定の態様でしか効果を奏することが示されていないから,本件各訂正発明においても,依然としてサポート要件違反の無効理由が存するというべきである。

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