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平成25年(ワ)第30799号
強磁性材スパッタリングターゲット事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 被告製品(ターゲット)の断面で観察される「円形」の相が,「球形」である場合の「直径」を求めることはできず,さらに,当該「円形」の相が「球形の相」であるとしても,一つの測定箇所の測定値によって,「球形の相」全体として「Coを90wt%以上含有する」ことが合理的に推認されるとはいえない,とされた。

 事件番号等:平成25年(ワ)第30799号(東京地裁 H28.04.27)
 事件の種類(判決):特許権侵害差止請求(請求棄却)
 原告/被告:JX金属株式会社/田中貴金属工業株式会社
 キーワード:構成要件充足性,測定箇所,測定方法
 関連条文:特許法70条

○裁判所の判断

 本件明細書を精査しても,本件特許発明にいう「金属素地(A)」の中に存在するとされる「相(B)」の立体形状が,実際に「球形」であることを確認する方法が明らかにされているとは認め難く,実施例及び比較例について「相(B)」の立体形状の観察結果(三次元的な確認)を得た旨の記載も見当たらない。
 ターゲットの断面(一水平面)において「円形」に観察される相であっても,当該相の立体形状がいかなるものであるは不明であり,当然に「球形」であるといえるものではない。また,上記の点を措き,ターゲットの断面(一水平面)において「円形」に観察される相の立体形状が「球形」であると仮定しても,同断面において「円形」に観察される相について行った測定結果に基づいて,当該相が「球形」である場合の「直径」を近似的に求めることはできない。
 本件明細書の記載によれば,構成要件B-(1)にいう「Coを90wt%以上含有する」「球形の相(B)」とは,「球形の相(B)」全体として「Co含有量が90wt%以上」であることが必要であるというべきである。なお,本件明細書を精査しても,球形の相(B)におけるCo含有量の測定方法について,より具体的な説明がされた箇所は,見当たらない。
 「球形の相」の中のCoの濃度分布(三次元分布)が具体的にどのようなものなのかが明らかとされていない以上,それぞれの「球形の相」について,一つの測定箇所の測定値が90wt%以上であったとしても,直ちに「球形の相」全体として「Coを90wt%以上含有する」ことが合理的に推認されることにはならない。

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