n-層ではなくn+層に負電極用の露出表面が形成された窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層を開示する乙7~12号証をもって,n+層ではなくn-層に電極形成用の露出表面を形成することが設計的事項であるとはいえない,とされた。
事件番号等平成26年(ワ)第8905号(東京地裁 H28.06.15)
事件の種類(判決):特許権侵害差止等請求(一部認容)
原告/被告:日亜化学工業株式会社/E&EJapan株式会社,株式会社立花エレテック
キーワード:「一つの層」の観念,進歩性,設計的事項
関連条文:特許法70条,29条2項
*構成要件充足性について
被告製品中の高Si濃度領域は,・・その上下に存する領域(Siの濃度がほぼ一定している領域)とは異なり,不純物たるSi濃度が,次第に増大した後に減少していることが認められ,証拠(甲23ないし25)によれば,半導体の分野において,このように濃度が変化している領域を「一つの層」と観念することがあるものと認められるから,被告製品中の高Si濃度領域も,「一つの層」と観念して差し支えないというべきである。被告製品は,構成要件1B「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有すると共に,」・・を充足する。
*乙6発明に基づく容易想到性について
乙7号証ないし乙12号証には,窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層中において,・・・いずれも,n-層ではなくn+層に負電極用の露出表面が形成され,かつ,同露出表面が形成されたn+層に接して,当該n+層の上側に設けられたn-層が形成された構成が開示されているにとどまり,「電子キャリア濃度が小さくかつ露出表面が形成されたn-層と,これに接してこれよりも基板側に電子キャリア濃度が大きいn+層が設けられている」という,相違点6-2に係る本件発明1の構成は開示されていない。これらの証拠をもって,n+層ではなくn-層に電極形成用の露出表面を形成することまでもが設計的事項にすぎないなどということはできない。本件発明1が,乙6発明に被告ら主張の周知技術又は公知技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであったとは認められない。