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平成25年(行ケ)第10240号
半導体装置の製造方法事件


弁理士 玉腰 紀子
弁理士 須山 佐一

○判決のポイント

 リードレス表面実装型半導体装置に関する引用例1に,リードフレームを用いた樹脂封止型の半導体装置に関する甲4文献を適用することは容易想到ではないが,本件特許発明1は引用例2と周知技術に基いて容易想到であるとして,拒絶審決が維持された。

 事件番号等:平成25年(行ケ)第10240号(知財高裁 H26.08.07 判決言渡)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:日立マクセル株式会社/住友金属鉱山株式会社
 キーワード:容易想到,慣用手段
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本件特許発明1は,ステンレス基板(1)の一面側に,アイランド部(2a)および電極部(2b)を形成するためのパターンからなるレジストパターン層を形成する工程,ステンレス基板(1)の露出面に対し化学エッチングにより不活性膜を除去する工程,不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)とリード層(12)の二層構造から成るアイランド部(2a)および電極部(2b)を独立して形成する工程,半導体素子(S)搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層(4)を形成する工程,ステンレス基板(1)を引き剥がし除去し,アイランド部(2a)および電極部(2b)の実装用金属薄膜(11)の各裏面が,樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程を有する,樹脂封止型の半導体装置の製造方法である(請求項1)。
 審決は,本件特許発明1は,引用例1に記載の発明,甲4文献及び周知の事項に基いて想到容易であり,また,引用例2,引用例1,甲4文献及び周知の事項に基いて想到容易であるとして請求を棄却した。

○知財高裁の判断

(1)取消事由1(引用例1に関する認定判断の誤り)について
 プリント基板を用いたリードレス実装方式の樹脂封止された半導体装置に関する引用例1記載の発明の解決課題からは,甲4文献の記載事項を適用することについての何らの示唆も動機も得ることができず,他に引用例1に甲4文献の記載事項を適用するべきことが記載又は示唆されているとも認められない。・・・リードレス表面実装型半導体装置の製造方法である引用例1に接した当業者が,引用例1における課題を解決するためにリードフレームを用いた樹脂封止型の半導体装置の製造方法に関する甲4文献の記載事項を適用することが容易であるとも認められない。・・・引用例1記載の発明の半導体素子の搭載面及び実装面と,甲4文献の記載事項における半導体素子の搭載面及び実装面とは逆の関係になっており,引用例1記載の発明に,甲4文献の記載事項を組み合わせることは容易でもないし,仮に組み合わせることが容易であったとしても,それぞれの金メッキ層及び電着(電鋳)金属層の機能も異なるものであるから,本件特許発明1に至るものではない。
 以上のとおり,・・・本件特許発明1が引用例1記載の発明に甲4文献の記載事項を適用することで容易想到であるとする審決は,この限度では誤っている。

(2)取消事由2(引用例2に関する認定判断の誤り)について

 ①ステンレスに金メッキをする際に,化学エッチングにより不活性膜を除去することは,本件出願前に周知の技術であったといえる。引用例2記載の発明においても,選択的に金薄膜層を形成する前に,ステンレス基板の表面を化学エッチングによる表面酸化被膜除去等の表面活性化処理をすること,すなわち,「ステンレス基板の露出面に対し,化学エッチングにより不活性膜を除去する工程」を行うことは,当業者であれば,必要に応じて適宜なし得るものである。したがって,審決の相違点1の判断に誤りはない。
 ②積層膜の形成方法として,レジストパターンを形成したステンレス基板上にメッキにより膜を連続して形成して,その後,レジストパターンを除去することは甲4文献及び引用例1に記載されているほか,・・・・慣用手段であると認められる。
 金薄膜層とNi又はNi・Co薄膜金属層のそれぞれが別工程でパターニングして積層する引用例2記載の発明の方法が,一旦レジスト膜を除去して再度レジスト膜を形成する点において,膜を連続して形成する慣用手段と比較して,より工程数が多いことは自明である。そうすると,当業者は,「半可撓性平板状のステンレス基板の一面に,レジスト膜をパターンニングして半導体素子の登載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露出させて,選択的に金薄膜層を形成した後,パターンニングしたレジスト膜を除去して,金薄膜層が選択的に形成された面,全面にNi又はNi・Coの薄膜金属層を形成し,続いて,Ni又はNi・Co薄膜金属層を選択的に除去」する工程に代えて,上記の慣用手段を適用して相違点2に係る構成とすることを容易に想到すると認められる。

 以上よりすると,本件特許発明1は,引用例2記載の発明と上記の慣用手段から容易に想到することができたというべきである。

(玉腰 紀子)

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