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平成28年(行ケ)第10041号
潤滑油組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本願発明のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について,明細書に化学構造や製造方法の記載がなく,当業者が本願発明の化学シフトのパラメーターで特定された粘度指数向上剤を入手するのに過度の試行錯誤を要するから,本願明細書は,実施可能要件を満たさない,とされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10041号(知財高裁 H28.09.28)
 事件の種類(判決):拒絶審消取消請求(請求棄却)
 原告/被告:株式会社JXエネルギー株式会社/特許庁長官
 キーワード:実施可能要件,パラメーター,過度の試行錯誤
 関連条文:特許法36条4項1号

○知財高裁の判断

 本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明の粘度指数向上剤の化学構造や製造方法の記載はない。また,本願発明にいう粘度指数向上剤の実施例として特定できるものは,【0104】に記載されたA-1のみと認められるところ,A-1の具体的な化学構造や製造方法,製品名・商品名等についての記載はなく,本願明細書には,式(1)と各種パラメーターが示されているだけである。そこで,本願明細書に接した当業者が,これら特定事項と技術常識から,本願発明にいう粘度指数向上剤を製造できるものであるか否かを,更に検討する。
 当業者は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載や技術常識を考慮しても,本願発明の粘度指数向上剤の化学構造を知ることができない。結局,当業者は,本願発明の粘度指数向上剤を入手するために,本願明細書の記載に基づいて,一般式(1)の構造単位となる単量体0.1~70モル%と,その他の任意の(メタ)アクリレート単量体や任意のオレフィン等に由来する単量体を含み,かつ,側鎖にβ構造を有する単量体と直鎖構造を有する単量体との混合物を共重合して粘度指数向上剤を製造した後,その13C-NMRを測定し,M1/M2が0.2~3.0の範囲に含まれるか否か確認するという作業を,極めて多数の粘度指数向上剤について繰り返し行わなくてはならない。
 したがって,本願明細書は,当業者が実施できる程度の明確かつ十分に記載されたものとは認められない。

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