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判例情報


平成27年(行ケ)第10177号
アモルファス酸化物薄膜の気相成膜方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 アモルファス本件組成の薄膜形性において,引用例には,酸素量の変化とキャリヤ濃度の低下の関係や導電率を変化させた膜が半導体活性層として機能するかの開示がないから,本件発明のキャリヤ濃度で,薄膜トランジスタの半導体活性層に用いることには困難性がある,とされた。

 事件番号等:平成27年(行ケ)第10177号(知財高裁 H28.10.12)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:株式会社半導体エネルギー研究所/国立研究開発法人科学技術振興機構
 キーワード:進歩性,困難性,半導体活性層,キャリヤ濃度
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 引用例1の請求項1及び2の記載は,薄膜トランジスタの半導体層の組成を限定するものではないものの,特定の金属元素を含む,エネルギバンドギャップが3eV以上であって,かつ電子キャリヤ濃度が1018個・cm-3以下である透明半導体酸化物薄膜の成膜方法を記載するものではない。そして,酸素量を変化させることによりどの程度キャリヤ濃度を低下させることができるか,導電率を変化させた膜が半導体活性層として機能するかは酸化物の種類により異なるものではなく,ITO膜以外の酸化物薄膜についてもITO膜と同一の性質を示すということが,当業者の技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,引用例1に,ITO膜について,・・・の透明酸化物薄膜を成膜する方法が開示されているからといって,ITO膜以外の酸化物薄膜についても同一のことが開示されているなどということはできない。
 引用例4,6,7及び8,並びに甲25及び29に開示された本件組成の薄膜は,薄膜トランジスタの半導体活性層に用いるものとして開示されているものではない。仮に,引用発明2において,酸化亜鉛(ZnO)の成膜に代えて,アモルファス本件組成の薄膜の成膜を試みたとしても,・・・アモルファス本件組成の薄膜について,酸素濃度を調整することによりどの程度キャリヤ濃度が変化するかを調べたデータや実際に作製した例についての開示もないのに,当業者が,これらの記載から直ちに,引用例9に示唆されたキャリヤ濃度より更に低い,電子キャリヤ濃度が1016/cm以下となる薄膜の作製が可能であると予測することは困難であるといわざるを得ない。

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