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平成27年(行ケ)第10190号
油または脂肪中の環境汚染物質の低減方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 甲1発明1において,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構成は課題解決のために不可欠であるから,これを,周知技術に代えることには阻害要因がある,とされた。

 事件番号等:平成27年(行ケ)第10190号(知財高裁 H29.02.22)
 事件の種類(判決):無効審消取消請求(審決一部取消)
 原告/被告:プロノヴァ・バイオファーマ・ノルゲ・アーエス/日本水産株式会社
 キーワード:進歩性,阻害要因,課題解決に不可欠な構成
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 甲1公報に記載された発明は,海産油等の油組成物からEPAやDHAを回収する方法について,従来技術である,尿素錯化反応と分子蒸留とを組み合わせた方法やリパーゼの基質選択性を利用してEPA及びDHAに富むモノグリセリドを製造する方法における問題,すなわち,①原料海産油由来のEPA及びDHAの回収率が低いこと,②多くの環境汚染物質が除去されないこと及び③EPAやDHAを精製することが困難であることを解決することを課題とする発明であると理解されるところ,このうち,上記①及び③の課題の解決のためには,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成」し,その上で分子蒸留を行うことにより,所望でない飽和および単不飽和脂肪酸を実質的に有しないグリセリドの残余画分を得ることが不可欠であり,この工程を,「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加」した上で分子蒸留を行う工程に置換したのでは,上記発明における上記②の課題は解決できたとしても,これとともに解決すべきものとされる上記①及び③の課題の解決はできないことになる。
 してみると,甲1公報に記載された発明において,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構成に代えて,周知技術である「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加する」構成を採用することは,当該発明の課題解決に不可欠な構成を,あえて当該課題を解決できない他の構成に置換することを意味するものであって,当業者がそのような置換を行うべき動機付けはなく,かえって阻害要因があるものというべきである。

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