知的財産情報

ホーム > 知的財産情報 > 判例紹介 > 赤外線センサIC事件

判例情報


平成28年(行ケ)第10044号
赤外線センサIC事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 引用発明にこれと課題の異なる周知技術を組合せた場合に生じる現象を考慮する必要があるため,当業者はあえてこのような組合せを採用しない,また,引用発明に周知技術を適用した場合,引用発明の作用が阻害されるから阻害要因がある,とされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10044号(知財高裁 H28.06.20)
 事件の種類(判決):無効審消取消請求(審決取消)
 原告/被告:旭化成エレクトロニクス株式会社/Y
 キーワード:周知技術の認定,動機付け,阻害要因
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 光吸収層に所定の濃度のp型ドーパントを含ませるのは,光吸収層の伝導帯の電子密度を低減させるという目的のために行われるものであって,また,それによって生じ得る現象を考慮しなければならないものである。本件審決が認定するように,赤外線検出器において,おおよそ雑音を低減する手段として,光吸収層にp型ドーピングを行うことが,本件特許の出願日当時,周知であったと認めることはできない。
 光吸収層にp型ドーパントを含ませることによって,一般的に赤外線検出器の検出能力が向上するとしても,それによって生じ得る現象を考慮することも必要であるから,当業者は,光吸収層の伝導帯の電子密度を低減させるという課題を有しない引用発明の光吸収層に,あえてp型ドーパントを含ませようとは考えない。
 引用発明の赤外線検出器は・・・,ドーパントがなるべく除去された第2の化合物半導体層と第3の化合物半導体層との間の伝導帯レベル差ΔEcを大きくとることにより,キャリアの熱生成レートを非常に小さくするとともに,コンタクト部におけるキャリア生成から活性領域を隔離することによって,検出能力を向上させるというものである。一方,本件周知技術は,光吸収層に,伝導帯の電子密度が低減する所定の濃度に至るまでp型ドーパントを含ませるというものであるところ,その場合には,・・伝導帯レベル差ΔEcは,p型ドーパントに相当する分だけ小さくなる。
 そうすると,伝導帯レベル差ΔEcを大きくとることによって,検出能力を向上させるという引用発明の作用は,本件周知技術を適用することにより,阻害されることになる。

© 2017 SAKURA PATENT OFFICE. All Rights Reserved. 特許業務法人 サクラ国際特許事務所
〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目18-14 ヨシザワビル6階
Tel. 03-5577-3066(代)/Fax. 03-5577-3067
国内および外国特許・意匠・商標の出願代理、鑑定、相談、訴訟|特許業務法人 サクラ国際特許事務所