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平成28年(行ケ)第10152号
電荷制御剤事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 明確性要件違反及び新規性欠如の基礎となる原告の再現実験は,本件特許明細書に記載された事項を再現したものではないなどとして,原告の主張が退けられた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10152号(知財高裁 H29.08.03)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:山本通産株式会社/保土谷化学工業株式会社
 キーワード:再現実験,新規性,明確性要件,電気伝導度
 関連条文:特許法29条1項3号,36条6項2号

○知財高裁の判断

(明確性要件について)
 原告は,被告製品である電荷制御剤について,異なる分散装置を使用し,分散時間を変化させて電気伝導度の測定を行ったところ,分散時間を長くするにしたがって電気伝導度は増加し,110μS/cmを超えても変化し続け,飽和値に達しなかった(甲44)と主張する。しかし,甲44の実験1では,対象となる電荷制御剤は粉砕されて,微粒子化したものと考えられる。原告は,このような分散であっても本件発明の「分散」に相当すると主張するが,前記のとおり,本件発明における「分散」とは,電荷制御剤の表層に存在する無機塩量に起因する電気伝導度を測定可能なように分散させることを意味するから,電荷制御剤の表層ではなかった部分(内部にあった部分)を新たに表層(表面)とするような粉砕をすることまでを意味していないというべきである。本件発明における「分散」とは,粉砕を伴う方法を含まないというべきであるから,甲44に基づく原告の主張は前提を欠くもので,採用することができない。

(新規性について)
 甲4実験における試料の調製方法についてみると,特に,甲4実験で採用されている「エタノール」を用いた洗浄は甲1に記載されていない手順であるということができるから,甲4実験における試料の調製方法は,甲1の段落【0057】に記載された「荷電制御剤C」の調製方法を忠実に再現しているということはできない。甲4の実験方法は,甲1の「荷電制御剤C」の調製方法を忠実に再現しているものではないとの審決の判断に誤りはない。

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