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平成29年(行ケ)第10006号,平成29年(行ケ)第10015号
ランフラットタイヤ事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本件発明の技術分野では,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても,外挿線を引くことができるから,請求項1及び2の「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との各記載は明確であるとされた。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10006号,平成29年(行ケ)第10015号(知財高裁 H29.08.22)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求(審決一部取消)
 原告/被告:住友ゴム工業株式会社/株式会社ブリヂストン
 キーワード:補正要件,明確性,実施可能要件,動機付け
 関連条文:特許法36条6項2号

○知財高裁の判断

 請求項1及び2の記載のうち「急激な降下」部分とは,動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す図において,左から右に向かって降下の傾きの最も大きい部分を意味することは明らかである(【図2】)。また,傾きの最も大きい部分の傾きの程度は一義的に定まるから,「急激な降下部分の外挿線」の引き方も明確に定まるものである。
  ASTM規格及びJIS規格を参照すると,ポリマーやプラスチックのガラス転移温度の算出に当たり,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから,特定の温度範囲における傾きの変化の条件を規定せずに,ほぼ直線的な変化を示す部分を把握することは,技術常識であったというべきである。そして,ポリマー,プラスチック及びゴムは,いずれも高分子に関連するものであるから,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,その主成分である高分子に関する上記技術常識を当然有している。したがって,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,上記技術常識をもとに,昇温条件で測定したときの動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す図において,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても,
「ほぼ直線的な変化を示す部分」を把握した上で,同部分の外挿線を引くことができる。
 したがって,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降下」,「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との各記載は明確である。

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