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判例情報


平成28年(行ケ)第10189号
光学ガラス事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 光学ガラス分野の当業者は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,通常行われる試行錯誤の範囲内で,本願物性要件を満たす光学ガラスの条件を維持しながら配合組成を調整して本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることが可能である,とされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10189号(知財高裁 H29.10.25)
 事件の種類(判決):拒絶審決取消請求(審決取消)
 原告/被告:株式会社オハラ/特許庁長官
 キーワード:サポート要件,実施可能要件,ガラス組成,配合組成
 関連条文:特許法36条4項1号,6項1号

○知財高裁の判断

 本願組成要件に規定された各数値範囲は,実施例によって本願物性要件を満たすことが具体的に確認された組成の数値範囲に比して広い数値範囲となっており,そのため,本願組成要件で特定される光学ガラスのうち,実施例に示された数値範囲を超える組成に係る光学ガラスについても,本願物性要件を満たし得るものであることを当業者が認識できるか否かが問題となる。
 そこで検討するに,光学ガラスの製造に関しては,個々の成分の含有量の範囲等と物性との因果関係を明確にして,所望の物性のための必要十分な配合組成を明らかにすることは現実には不可能であり,そのため,ターゲットとされる物性を有する光学ガラスを製造するに当たり,当該物性を有する光学ガラスの配合組成を明らかにするためには,既知の光学ガラスの配合組成を基本にして,その成分の一部を,当該物性に寄与することが知られている成分に置き換える作業を行い,ターゲットではない他の物性に支障が出ないよう複数の成分の混合比を変更するなどして試行錯誤を繰り返すことで当該配合組成を見出すのが通常行われる手順である。
 当業者は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,本願物性要件を満たす光学ガラスを得るには,「Nb成分を40%超65%以下の範囲で含有し,かつ,TiO/(ZrO+Nb)を0.2以下とする」ことが特に重要であることを理解するものといえるから,これらの条件を維持しながら,光学ガラスの製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で上記のような成分調整を行うことにより,高い蓋然性をもって本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることが可能であることも理解し得る。

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