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平成29年(行ケ)第10032号
導電性材料の製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 訂正により除かれる領域の定量的特定などがなくても,その部分を観念することは可能であるから,除かれる対象が特定されていないとはいえない,また,当初明細書には訂正に係る銀の粒子の「融着」の作用機序を推測できる記載があるから,当該作用機序を追加する訂正は新規事項の追加には該当しない,などとして訂正を不成立とした審決が取り消された。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10032号(知財高裁 H29.11.07)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求(審決取消)
 原告/被告:日亜化学工業株式会社/Y
 キーワード:訂正,独立特許要件,作用機序の推測,新規事項
 関連条文:特許法126条5項,6項

○知財高裁の判断

 本件訂正前の請求項9においては,「銀の粒子」の形状に限定がなく,融着の態様は,「互いに隣接する部分において融着」とされていたところ,本件訂正後の請求項9においては,訂正事項9-2により,「但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」と付加されたことにより,「銀の粒子」の形状が「銀フレーク」で,その融着箇所が「その端部でのみ融着している」との態様のものが除かれている。これにより,少なくとも,銀フレーク,すなわち銀の薄片が,そのへりの部分でのみ融着する態様のものは除外されることになり,本件訂正後の請求項9は,本件訂正前の請求項9よりも,その範囲が減縮される。また,銀フレークの厚さ及び形状が具体的に特定されていなくても,「薄片」,「うすいかけら」を観念することは可能であり,また,「端部」の領域が定量的に示されていなくても,「中心から遠い,外に近い」部分,「へり」の部分を観念することは可能であるから,訂正事項9-2によって除かれる対象となる構成が特定されていないとはいえない。
 本件訂正発明10においては,「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより」銀の粒子が融着することを付加する訂正がされている。本件明細書【0020】において,「酸化剤である酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下」,「酸化剤である金属酸化物存在下」という2つの状況において,いずれも金属酸化物(酸化銀を含む)が銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,融着が生じるとの作用機序が推測できることを開示している。そうすると,訂正事項10-1は,新規事項の追加には当たらない。

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