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平成28年(行ケ)第10222号
焼鈍分離剤用酸化マグネシウム事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 フォルステライト被膜の性能改善には,CAA値及び微量元素の含有量のいずれか一方に着目することも,両者を重畳的に着目することも可能であったから,CAA値の特定なく微量成分含有量及びモル比の特定のみで本件課題を解決し得るとは認められないとした本件審決には誤りがある,とされた。

 事件番号等:28年(行ケ)第10222号(知財高裁 H29.11.29)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求(審決取消)
 原告/被告:タテホ化学工業株式会社/協和化学工業株式会社
 キーワード:サポート要件,CAA値,微量成分
 関連条文:特許法36条6項1号

○知財高裁の判断

 CAA値の調整は,最終焼成工程の焼成条件により可能であるから,焼成条件を調整することによって,本件各発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいても,実施例以外のCAA値を取り得ることは,技術常識から明らかである。また、本件特許の出願当時,フォルステライト被膜の性能改善という課題の解決を図るに当たり,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される微量元素の含有量に着目することと,CAA値に着目することとが考えられるところ,当業者にとって,いずれか一方を選択することも,両者を重畳的に選択することも可能であったと見るのが相当である。以上のことから,CAA値について何ら特定がない酸化マグネシウムにおいて,本件微量成分含有量及び本件モル比のみの特定をもってしては,直ちに本件課題を解決し得るとは認められないとした本件審決には誤りがある。
 本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件各発明において規定されたCa,Si,P,S,Bの5種類の元素以外の元素に関しては,Cl,Fe等の不純物が含まれていなくとも,また,そうした不純物が含まれていても,同様に本件課題を解決し得たことを理解し得る。本件審決は,「発明の詳細な説明においては,上記Cl,F等の微量成分の影響については何ら検討がなされておらず」と指摘するけれども,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明においてCl,F等の微量成分の影響について全く検討がされていないとはいえず,むしろ,その実施例においてCl,F等の微量成分の影響をうかがわせる事情がなかったことから,それ以上の具体的な検討を行う必要がなかったものと認められる。すなわち,本件審決の前記指摘は失当というべきである。

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