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平成28年(行ケ)第10225号
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 ヨウ素含有量が少ないPAS樹脂を製造することができること自体は周知の技術的事項であったが,そのようなPAS樹脂の製造条件やヨウ素含有量に影響を与える重合禁止剤の種類,添加の割合及び添加の時期は明らかではないから,先願発明と本件発明は同一ではないとされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10225号(知財高裁 H29.11.29)
 事件の種類(判決):取消決定取消請求(決定一部取消)
 原告/被告:DIC株式会社/特許庁長官
 キーワード:拡大先願,発明の同一性,PAS樹脂組成物,ヨウ素含有量
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 PAS樹脂に対し0.01~1,200ppmの範囲となる割合でヨウ素原子を含有することが実質的な相違点ではなく,先願明細書発明Bに記載されているに等しい事項であるといえるか否か(発明の同一性)について検討する。
 乙1,乙2及び甲1の各記載から,ジヨード化合物と固体硫黄と,更に「重合停止剤」とを含む混合物を溶融重合させることによって製造されるPAS樹脂について,ヨウ素含有量が1,200ppm以下のものが得られること,上記のいずれの例においても重合禁止剤(重合停止剤)が添加されていることが理解でき,このような,ヨウ素含有量が少ないPAS樹脂を製造することができること自体は,優先日において周知の技術的事項であったといえる。
 しかしながら,上記各文献からは,このような,1,200ppm以下の低ヨウ素量のPAS樹脂を製造するために必要な条件,すなわち,重合時の温度や圧力,重合時間等は必ずしも明らかでない。また,重合禁止剤の種類や添加の割合のみならず,添加の時期(タイミング)によっても,得られる樹脂の重合度や不純物としてのヨウ素含有量が異なることが予測されるところ,それらとの関係についても一切明らかにされていない。してみると,これらの各文献に記載された事項から,直ちに先願明細書にヨウ素含有量が1,200ppm以下であるPAS樹脂組成物が記載されているとの結論を導くことはできないというべきである。

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