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平成28年(行ケ)第10219号
フラーレン誘導体の混合物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 技術常識は,製造後の非修飾のフラーレン類に,C60酸化物及びC70酸化物が存することを開示するものの,フラーレン誘導体の酸化物が存することを開示していないから,引用発明と本願発明の相違点は当業者が容易に想到できたものではない,とされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10219号(知財高裁 H29.11.14)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:昭和電工株式会社/ソレンネ ベーヴェー
 キーワード:進歩性,フラーレン酸化物,精製
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 本件審決は,引用発明は,C60の酸化物,C70の酸化物,C60のフラーレン誘導体の酸化物及びC70のフラーレン誘導体の酸化物を含み,かつ,これらを0.001%から5%までの累計範囲で含むかどうか明らかではない点を相違点2とし,引用発明のフラーレン変性物(フラーレン誘導体)に,酸化物が含まれているか,どの程度含まれているかは不明であるから,相違点2は実質的相違点であるとした。これに対し,原告は,引用発明のフラーレン変性物であれば,酸化物が含まれることなどから,相違点2は実質的相違点ではないと主張する。
 しかし,本件特許の優先日当時の技術常識は,「製造後の非修飾のフラーレン類に,C60酸化物及びC70酸化物が存し,これを除去するために精製が行われること」にとどまるものであり(以下,この技術常識を「本件技術常識」という。),甲18及び26に,フラーレン誘導体の酸化物に関する記載はない。酸化物の含有及びその累計範囲に関する相違点2は,実質的相違点である。
 引用発明は,C60のフラーレン誘導体の酸化物やC70のフラーレン誘導体の酸化物を含むものとはいえないところ,引用例には,フラーレン誘導体の酸化物に関する記載が一切なく,フラーレン誘導体の製造方法に関する記載もない。また,本件証拠上,「製造後のフラーレン誘導体」にフラーレン誘導体の酸化物が存することが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,相違点2に係る本件発明の構成のうち,C60の酸化物,C70の酸化物に加え,C60のフラーレン誘導体の酸化物及びC70のフラーレン誘導体の酸化物も含む構成を備えるようにすることを,引用発明から容易に想到することができたということはできない。

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