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平成24年(行ウ)第591号
1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

審査官と合意した範囲よりも著しく狭い範囲に減縮補正した出願に対してなされた「特許査定」について,出願人からの行政不服審査法に基く異議申立てが特許庁長官により却下され,この却下決定の取り消し等を求める行政事件訴訟法に基く訴えが認められて「特許査定」が取り消された。

 事件番号等:平成24年(行ウ)第591号(東京地裁 H26.03.07 判決言渡)
 事件の種類(判決):行政処分取消義務付け等請求事件(特許査定無効確認,却下決定取消し,特許査定取消し義務付け)
 原告:レクサン ファーマシューティカルズ,コーリアリサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
 被告:国,処分行政庁 特許庁審査官,採決行政庁 特許庁長官
 キーワード:審査官との合意,特許査定の取消,補正書の補正
 関連条文:行服法3条1項,同2項,行訴法3条6項2号,特許法195条の4,同法17条1項

○事案の概要

 特許出願人である原告ら代理人の担当弁理士は,拒絶引例記載の化合物を排除する意図で,特許請求の範囲の「R1及びR2は各々水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたはハロゲンであり,」の「R1」を「フッ素」に限定し,「R2」については,定義中の「ハロゲン」を「塩素」に限定することによる特許査定の可否について前置審査の担当審査官に電話で見解を尋ね,肯定的な返答を得たので,補正について原告らの了承を得た上で手続補正書を提出した。
 しかし,担当弁理士が審判請求書と同時に提出した補正書で,誤って,特許請求の範囲を「R1はフッ素であり,R2は塩素であり……」と著しく限定した補正をしてしまい,前置審査の担当審査官は,この限定された特許出願について特許査定をした。
 原告らは,行政不服審査法に基き特許庁長官に対して特許査定の取消しを求めて異議申立てを行ったが,特許庁長官は,この異議申立てを特許法195条の4および行服法4条1項に違背し不適法であるとして却下した。原告らはこの却下決定の取消し等を求めて東京地裁に訴えを提起した。

○東京地裁の判断

 東京地裁は,「‥‥特許法195条の4が,これらの処分等につき行服法による不服申立ての対象外とした趣旨は,‥‥特許法上,当該処分に対する不服を審理すべき手続が別に存在し,かつ,当該手続によって当該処分の不服を審理することが必要かつ適切であると認められることにあると解することができる。」,
 「‥‥特許査定について,特許法特有の手続としての不服申立手段のない中で,特許査定につき,その不服を審理すべき別の手続として行訴法3条2項に基づく特許査定取消しの訴え又は同法3条4項に基づく無効確認の訴えを挙げることができる。これらの訴えは,たとえ特許法195条の4の「査定」の中に特許査定が含まれ,特許査定については行政不服審査の申立てができないと解した場合であっても,特許査定が行政処分である以上,その訴訟の対象から除外されることはないと考えられる。」
 などとして,特許庁長官の異議申立て却下の決定を取り消した。

(須山 佐一)

○コメント

 本件判決は,手続補正書による補正内容が,審査官と代理人担当者との電話面接の内容からかけ離れたものであることから,審査官側に手続違背ありとされた案件についてのもので,特許査定全般に対して取消可能とする判断が示されたわけではない。
 なお,判決は,「少なくとも,本件補正書を出願人の真意に基づいて補正する場面においては,同法17条1項本文のみが適用され,同項但し書きの規定は適用されないものと解される。」として,特許法17条の2~4の規定によって補正することができる場合以外にも「補正書の補正」ができる場合があるとの判断も示している。
 特許請求の範囲を真意に基づかない内容に誤って補正することは,本来あってはならないことではあるが,一定の場合には,それが救済される可能性があることを本判決は,示している。

(須山 佐一)

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