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平成26年(行ケ)第10082号
ミクロ顔料混合物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 二酸化チタンの金属セッケンによる被覆の目的いかんによって発明の構成が変化するわけではないから,補正前発明と引用発明に構成上の実質的な相違点はないとして,拒絶審決が維持された。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10082号(知財高裁 H27.03.10 判決言渡)
 事件の種類(判決):拒絶審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:ベーアーエスエフ シュバイツ アーゲー/特許庁長官
 キーワード:補正却下,進歩性,構成上の実質的な相違点,二酸化チタン
 関連条文:平成18年改正前特許法17条の2第4項,29条2項

○事案の概要

 原告は,発明の名称を「ミクロ顔料混合物」とする分割出願(本件出願)をしたが,拒絶査定を受けたので,審判請求をするとともに手続補正(本件補正)をした。これに対し,特許庁は,本件補正を却下し,審判の請求は成り立たないとする審決をした。本件は,当該審決の取消訴訟である。
 本件補正前の請求項1記載の発明(補正前発明)は,特定の構造式で表わされる微粉化UV広域吸収体と,所定の二酸化チタンを含むUV-吸収体混合物に係る発明である。上記審決に際して認定された補正前発明と引用発明との相違点は,「二酸化チタンが,補正前発明においては「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」と特定されているのに対し,引用発明においてはそのような特定がなされていない点」である。

○知財高裁の判断

(補正却下について)
 本件補正は,特許請求の範囲請求項1の(b)成分を「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」から「平均粒径が10nm~150nmの粒状二酸化チタンを含み,TiO2の量は,分散物が40重量%を超える固体含量を有するような量であり,オイルが,植物油,脂肪酸グリセリド,脂肪酸エステル又は脂肪族アルコールから選択される,オイル分散物」に補正しようとするものである。
 本件補正前の「油分散化」の意味は,・・・の記載を踏まえると,「金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」とは,微粉化され,疎水性表面性能を示し,油相に分散化することができるように金属セッケンで被覆された「二酸化チタン」を意味すると解される。したがって,補正前発明のUV-吸収体混合物における,「二酸化チタン」は,金属セッケンで被覆されたものに限られていたというべきである。
 一方,補正発明における「オイル分散物」は,「二酸化チタン」がオイルに分散されてなる分散物であるが,特許請求の範囲の記載上,「二酸化チタン」に「金属セッケンで被覆された」という制限がなくなっている以上,金属セッケンで被覆されているものといないものの両方を含むといわざるを得ないから,金属セッケンで含まれていなかったものを新たに発明の対象に加えたことになる。また,補正発明における「二酸化チタン」は,「オイル分散物」の一成分にすぎず,「オイル分散物」そのものではないから,「オイル分散物」中における「二酸化チタン」以外の成分であるオイル等の成分が,補正前発明には含まれていなかったにもかかわらず,補正発明ではその対象となり,発明の対象が付加されたことになる。
 したがって,本件補正は,(b)成分を限定的に減縮するものではなく,そのものの意味するところを変更するものである・・・。

(引用発明との相違点の認定及びそれについての判断について)
 補正前発明の(b)成分「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」は,微粉化された二酸化チタンであって,表面が金属セッケンにより被覆されていることにより,油相に分散化するための疎水性表面性能が付与されたものである。他方,上記(2)のとおり,引用発明における二酸化チタンも,金属セッケンで被覆されたもので,表面は疎水性を有する。
 そうすると,審決は,補正前発明と引用発明の相違点として「二酸化チタンが,本件発明においては「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」と特定されているのに対し,引用発明においてはそのような特定がなされていない点」を認定したが,実質的には,二酸化チタンの金属セッケンによる被覆が,補正前発明では「疎水性表面を付与するため」のものであるのに対して,引用発明では目的が不明である点ということになる。しかしながら,被覆の目的いかんによって発明の構成が変化するわけではないから,補正前発明と引用発明に構成上の実質的な相違点はないというべきである。したがって,相違点に係る容易想到性を問題とする余地もまたないし,補正前発明が引用発明にはない顕著な効果を見出したものとも認められない。
 したがって,補正前発明は特許を受けることができないと判断した審決の結論に誤りはない。

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