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平成26年(行ケ)10225号
熱間圧延用複合ロール事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 特許請求の範囲には,「粗圧延」を特定する限定は見当たらず,粗圧延全般に用いることを目的とするものと認められ,容易に想到できないとはいえないとされた。

 事件番号等:平成26年(行ケ)10225号(知財高裁 H27.06.09 判決言渡)
 事件の種類(判決):維持審決請求事件(審決取消)
 原告/被告:日鉄住金ロールズ株式会社/株式会社フジコー
 キーワード:技術常識,特許請求の範囲の記載,ハイスロール
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本件訂正発明は,高速度鋼系材料を用いたロール(ハイスロール)に係る技術分野の発明であり,「熱疲労き裂が起点となってロール表面が損傷することを防止するため」の,元素成分比,肉盛層に晶出した金属炭化物の占有率及びサイズ,硬さ等が,所定の数値限定によって規定された「熱間圧延用複合ロール」に係る発明である。
 一方,引用発明(特開2002-346613号公報に記載された発明)は,鋼板などの圧延の仕上げ工程に用いられる熱間圧延用複合ロールである。
 審決は,本件訂正発明1と引用発明との間に,その用途や解決課題について相違がある(相違点1)と認定した上で,他の刊行物には,引用発明のロールを上記用途に適用することを動機付けたり,上記課題を解決することを目的とする記載は見られないとし,相違点1は容易想到ではないと判断した。

○知財高裁の判断

 ①ハイスロールを棒鋼,線材の圧延に使用すること(・・・)及びハイスロールを粗圧延に使用すること(・・・)は,本件特許出願当時の周知技術であること,②熱間圧延において,粗圧延時における熱疲労亀裂を原因とするロール表面の損傷を防止することは,技術常識識として,ロールの材質いかんにかかわらない技術課題として当業者に認識されていたこと(・・・)が認められる。
 そうであれば,当業者が,熱疲労亀裂を原因とするロール表面の損傷の防止をするという上記技術常識の観点から,甲1発明の熱間圧延複合ロールを,周知技術に従い棒鋼又は線材の粗圧延のためのものとすることは,格別困難ではない。

 被告は,本件訂正発明1のハイスロールは,従来のハイスロールでは対応できなかった特に高温高圧下でなされる棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延に使用されるものであるから,その用途・課題は容易に想到できない旨を主張する。
 まず,この点の検討に当たり,本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載をみると,「棒鋼,線材,あるいは形鋼の粗圧延のための熱間圧延用複合ロール」との部分は粗圧延全体を示している。そして,特許請求の範囲には,更に「圧延速度が小さいために鋼材と長時間接触することによりロール内部まで温度上昇するとともに水冷による冷却が回転ごとに繰り返されることによる熱疲労き裂が起点となってロール表面が損傷することを防止するため」とあり,本件訂正明細書には「前記したハイス系ロールの使用は,圧延速度の大きな仕上げ及び中間圧延機群での使用に限定されていた。なぜなら,このハイス系ロールを,圧延速度が小さな粗圧延機群に使用する場合,ロールが高温となった鋼材と比較的長い時間接触することにより,熱伝導によってロールの内部まで温度が上昇し,また水冷による冷却がロールの回転ごとに繰り返されることにより,ロールの表面から深いき裂が生じるからである。このため,このき裂が起点となって,ロールの表面が損傷し,ひいては表面の一部が剥離するため,全く使用に耐えるものではなかった。」(【0004】)とあり,圧延速度や温度についての定量的な記載があるものではなく,仕上げ圧延及び中間圧延との相対的な対比として記載されているにすぎず,一方で,本件訂正発明1の「粗圧延」が特定の箇所での使用に限定することを明示する記載は見当たらない。
 したがって,本件訂正発明1のハイスロールは,棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延全般に用いることを目的とするものと認められる。
 そうすると,前記(1)にて認定判断のとおり,・・・本件訂正発明1のハイスロールの使用用途及び解決課題が当業者において容易に想到できないとはいえない。

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